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2004年09月23日

[読書] 楠木正成

以前に読んだ北方謙三の「武王の門」が面白かったので、同じ著者の楠木正成を読んだ。腹いっぱい焼肉を食った後なのに、ハードボイルドの格好良さに痺れて徹夜で読んだ。

あらすじ

上巻は、鎌倉幕府の体制からはみ出した、「悪党」と呼ばれる半武士、半商人としての楠木正成が描写される。播磨の赤松円心、伊賀の金王盛俊、服部元成、大和の重里持久などの「悪党」と連携しながら、中世の高まりつつある経済を支える「物流」をキーワードとして、正成は勢力を伸ばしていく。

しかし、体制からはみ出した「悪党」は不安定な存在であり、言わば幕府の「お目こぼし」にあっている状態でもある。余り大きくなると幕府に潰されてしまうか、何らかの妥協により幕府体制に組み込まれるしか先はない。そして正成は大塔宮護良親王と出会うことにより、先の見えない現状を打破する方法として、「新しい国の形」を考え始める。

下巻では、太平記で良く知られてる楠木正成が描かれる。上巻の描写があるため、楠木正成の取った行動が良く理解できる。

  1. 赤坂城での挙兵と落城
  2. 千早城での挙兵と勝利
  3. 建武の失政、大塔宮護良親王の失脚、正成の諦観、足利尊氏との心の交流
  4. 足利尊氏の挙兵と京都での勝利

物語は、京都での勝利により足利尊氏を九州に追い落とし、正成が河内に戻った所で終わる。有名な桜井の別れや湊川での戦死は描かれない。

本書のどこが良かったのか

インターネット上の書評では、賛否相半ばすと言ったところである。しかし俺には面白かった。どこが良かったのかを以下に挙げてみる。

挙兵前の楠木正成像に説得力がある

俺と同様に、楠木正成と言えば「吉川太平記」でしか読んだことがない人が多いと思うが、どうも彼の持つ「勢力」が何によるものか、今ひとつ納得行かなかった。吉川太平記では兵学を学び、宋学により尊王心がある、思慮深い知将としての正成が描かれている。挙兵の理由は「尊王心」だが、それ以外の理由については述べられていない。

一方本書では、正成が物流により勢力を得たこと、体制からはみ出した悪党として、今以上に伸びていこうとすれば挙兵するしかなかったことが説得力を持って描かれている。恐らく著者が一番書きたかったのはここであろう。

倒幕後の「くすんだ正成」に説得力がある

吉川太平記を読んだ誰もが感じるのが、倒幕後の正成の影の薄さだ。鎌倉から上洛して来た足利尊氏との戦いにちょっと顔を出す程度で、その後はいきなり桜井の別れと湊川で終わりだ。

本書では、千早城での篭城で一度燃え尽きた正成が、建武の失政と大塔宮護良親王の死により「諦めて」しまうことが、上巻からの描写の積み重ねにより、「さもありなん」と思えたし、正成に共感もできた。

脇役の人物造形が魅力的

副主人公である大塔宮護良親王と足利尊氏、弟の楠木正季、ある意味ライバル関係にある悪党の赤松円心、公家の北畠具行、北畠顕家など、人物造形が魅力的である。副主人公の二人はちょっと格好良すぎるけど。

最後に

前提として、太平記を読んだことがないと楽しめないと思う。正成の死を書かずに余韻を残して終わっているのも、この後に来る湊川の敗死を知らないと、意味がわからなくなってしまう。

投稿者 かつ : 2004年09月23日 22:06

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